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煌びやかな宝飾時計の美、職人芸が光るきめ細やかな彫金が施されたエングレービングの時計……。さまざまな「美しさ」の基準がある時計ですが、やはりその頂点に君臨するのが、複雑なメカニカルの造形美を形成するコンプリケーションです。ただでさえ扱いが難しいとされ、クルマでいうところのコンセプトカーという位置づけですが、ここ10年で防水性、防塵性、耐震性など飛躍的な性能アップにより、実用に耐えうるコンプリケーションが各メーカーから続々と出ています。ということで、栄えある連載第一回目は、新たな脱進機を搭載し、時計の新たなる方向性を示すオーデマ ピゲのキャビネNo.5に注目します。
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機械式時計には、いつも規則正しく高速で往復回転運動している、テンプとひげぜんまいの2つから構成される“調速機”があります。この“調速機”にぜんまいのパワーを伝えて動かすのが“脱進機”で、往復の回数を数えて歯車を動かす機械式時計において最も大切な部品です。
現在広く使われている脱進機は、「アンクル(クラブツースレバー)脱進機」と呼ばれるもので、これは1759年にイギリス人時計師のトーマス・マッジがその基本形を発明したもの。つまり、約250年も機械式時計に基本的に大きな進歩はありませんでした。
今回取り上げるオーデマ ピゲの複雑腕時計「トラディション オブ エクセレンス キャビネNo5」はこの長い技術的停滞を打ち破る「ダイレクト・パルス方式のAP脱進機」を搭載した史上初めての腕時計。設計者である天才エンジニア、ジュリオ・パピ氏が、1791年にイギリス人時計師のロバート・ロビンが考案したメカニズムを発展させて、革命的な脱進機と、それを使った全く新しいムーブメントを完成させました。
現在、一般的な機械式腕時計の寿命は50年ほどで、3年ごとに分解掃除と調整が必要と言われています。
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実はこの50年と3年という時間は、アンクル脱進機の時間的限界なのです。アンクル脱進機では部品同士が噛み合う時に大きな衝撃が発生し、この衝撃が部品にダメージを与えるのです。そこでその衝撃を減らすために潤滑油を使うのですが、油というものは時間と共に蒸発・酸化するものですし、ゴミを吸着してしまうというやっかいなことも起こします。そこで3年ごとに整備し直す必要があるのです。
しかしいくらきちんと3年おきに整備しても、部品は少しずつ摩耗するのでやがてダメになります。部品そのものを交換しなけれればならない時、つまり寿命が来るのです。
しかしオーデマ ピゲのダイレクト・パルス方式のAP脱進機では、メカニズムの構造や部品のカタチがアンクル脱進機とまったく違うので、ひとつひとつの部品にかかる衝撃がとても少なくなっています。その結果、潤滑油が必要なくなりました。その上、ぜんまいのパワーが50%も効率的にテンプとひげぜんまいに伝わる構造にしたので、時間精度の改善にも成功したのです。オーデマ ピゲによれば現時点ですでに5年間にわたるテストを行っていて、耐久性も精度向上も確認されているとのこと。そしてごく近い将来、オーデマ ピゲはすべての製品にこの脱進機の導入を考えているそうです。
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もしそうなれば、機械式腕時計の50年という寿命、3年ごとの整備という時間的限界は、約250年ぶりの技術革新で大きく改善されることになります。おそらく最低でも倍にはなるでしょう。
2つのひげぜんまいを使った調速機、7日間パワーリザーブ機構、永久カレンダー機構など、この腕時計にはそれ以外にも技術的に新しいアイデアが満載されています。知れば知るほど感銘を受けずにはいられない。これはそんな、時計の歴史を書き換える腕時計です。
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テンプまわり これがダイレクト・パルス脱進機が搭載されている部分。手前の丸い輪がテンプとひげぜんまいで構成される調速機。そして、その後ろに見えている特殊なカタチの歯車がダイレクト・パルス脱進機を構成する部品のひとつです。そして実はこの腕時計には、調速機にも画期的な工夫があります。何と、ひとつのテンプに1本が常識のひげぜんまいが2本、上下に逆の方向に取り付けられているのです。これにより熟練職人の手に頼らなくても、安定した時間精度が実現できるようになりました。
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ケース裏側 オーバルケースの裏側のデザインも、どこにもない大胆なもの。7日間連続で機械を動かすための、2つの大きな香箱が見えます。その配置もとてもユニークです。
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1999年にオーデマ ピゲがスタートさせた、世界最高峰の時計コレクターたちのために企画された、全8作の独創的な複雑時計から構成される特別限定コレクション「トラディション オブ エクセレンス」の第5番目の作品。全8作すべてを購入するコレクターのために、たった20個だけが製作されます。ダイレクト・パルス脱進機ばかりでなく、永久カレンダー機構やパワーリザーブ表示機構、1秒ごとに秒針がジャンプして動くデッドビートセコンド機構など、考えられる限りの先進メカニズムが詰め込まれています。プラチナ、手巻き。7日間パワーリザーブ。3864万円/オーデマ ピゲ(オーデマ ピゲ ジャパン)
tel.03-5425-8550
http://www.audemarspiguet.com/jp/
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